糖質制限と健康対談・糖尿病代謝内科医・大城陽代さま×フスボン・川谷洋史

糖質制限と健康対談・糖尿病代謝内科医・大城陽代さま×フスボン・川谷洋史

糖質制限対談 どうも、皆さんこんにちは!今回は、対談型のコンテンツ第10段となります。

今回は、糖尿病代謝内科 日本糖尿病学会認定専門医・指導医で、フスボンのお客さまでもある大城陽代さまに来て頂きました。糖質制限に関する疑問にもお答えしていますので是非ご覧ください。


(川谷) 大城さま、本日は、お忙しいところありがとうございます。

(大城)こちらこそ、ありがとうございます!

(川谷)私は、広告に依存しない会員制のウェブメディアにて糖質制限を知り、実践し始めたのですが、大城様が、糖質制限を知ったきっかけなどがあれば教えて下さい。

(大城)自分自身の変調が、そもそもの始まりです。 幼少時より、糖質、中でも主食のおいしさに、どっぷり惚れ込みながら育ちました。

白米はもとより、玄米・もち米・雑穀米、なんでもうっとりしたものでした。

また、トーストや菓子パンもいける方で、ひといきに3個ほどは、軽く平らげるほど。

親は、健康的な食事を重視しておりましたので、私はこっそり、主食を追加食べしていたような具合。

大学生になると、仲間内から「痩せの大食い」と笑われたものでしたが、実際太る様子もなく、親元を離れた勢いあまって、ますます主食食いに熱をあげてしまいました。

それが、研修医として働き始めたころでしょうか、食後2時間ほどすると、目の奥に鈍痛がでるようになりました。

食後3時間ほどすると、決まって手が震えるような、身のおきどころが無くいらいらする感じ。
そして、食後4時間ほどになると、今度は無気力になったり、ぐっと眠たくなりました。

とくに、忙しさから主食のみをぱくっと口へ放り込んだ後、これらの症状が強く出現するように思えました。

あまりにこの傾向が続くもので、このような症状をきたす病気を自分なりに医学書で調べてみました。

結果、最も疑いやすい病気が、耐糖能異常症(糖尿病になるリスクの高い状態)であると判明しました。

この状態では、糖質を多量に摂った後、血糖値を下げるインスリンというホルモンが、うまくタイミングを合わせて出てきてくれません。最も血糖値が上がるとき、シュッと勢いよく出てきてくれず、そのあと時間をかけてダラダラと出てきてしまいます。間延びしたようなようなインスリンの出方になるようなのです。

結果、糖質を摂ってまもなく高血糖になるのに、数時間後には逆に低血糖ぎみになるようです。

これは、私の出生体重が2500g未満で、耐糖能異常症のハイリスク群であることにも合致していました。 そこで、どうせ治療に取り組むのなら、糖尿病患者向けの治療にしようと考えました。 そして、糖尿病の中でも、より厳格な治療を求められる1型糖尿病の治療にならおうと思い立ちました。 色々調べたところ、ご自身が1型糖尿病の患者でおられる米国のリチャード・バーンスタイン医師の著作にたどりつきました。 その中で謳われていたのが、糖質制限食でした。

(川谷)なるほどです。耐糖能異常症というのは低血糖のような症状ですかね。。2型糖尿病の治療ではなく、1型糖尿病の治療法をお調べになったのが、とてもよかったように思えます。

ここで大城様の、普段の医師としての業務内容について教えて下さい。糖質制限を治療で使うことなどがあれば、ご紹介頂きたいです。

(大城)健診業務と、糖尿病代謝内科(糖尿病・脂質異常症・甲状腺疾患などのホルモン系統の病気)の診療に、従事しております。 BMIが30を越えるような肥満のある患者さん、また、問診上、糖質を好んで多く摂取しておられるのを認めた患者さんには、糖質制限をご提案しております。

しょうがない気もいたしますが、米どころの地域では、なかなか受け入れられない印象がありました。

一方、どちらかというと主食が減るのはそんなに苦でないが、間食がやめられないという患者さんには、まずまず喜ばれました。

また、気分の変調や不眠を訴えられる患者さんにも、間食や夜食として、糖質を多くとる傾向があるように思います。

じっくりお話を拝聴できないため、なかなか糖質制限食のご提案はできずにおりますが、導入できれば、一定の効果はあるのではないかと考えております。

(川谷)ありがとうございます。糖質オフの商品が巷にたくさん出てきましたが、まだまだ糖尿病の治療では基本的にカロリー制限が支配していて、糖質制限は市民権を得てないですもんね。。

日本では稲作の文化が根強く残っているので、私も、主食を最後に食べること(カーボラスト)やなるべく玄米としてたべること、砂糖製品をやめることからいつも提案するようにしています。

ここで、糖質制限で注意すべき点について教えてください。特に、持病をお持ちの方やお子さんやご高齢の方など年齢に応じた考え方について教えて頂ければ幸いです。

糖質制限で注意すべき点

(大城)
○低血糖に陥りやすい持病のある方(例えば、肝硬変症)
○脂肪を多く摂ることが禁忌になる持病のある方(例えば、膵炎)
○蛋白質や脂肪を、うまくエネルギーに使えない持病のある方

以上のような方は、糖質制限を実施できません。

「~代謝異常症」という病名を告げられている方は、糖質制限実施の可否について、担当医に各自ご確認頂く必要があります。

そして、メインとなる糖尿病の患者さんですが、必ず担当医に、糖質制限の導入宣言を行って頂きたいです。 糖尿病の治療薬には、多く糖質を摂っていることを前提に処方するものがあります。 SU薬・グリニド薬・SGLT2阻害薬などが、これに当たります。薬の区分としては一見少ないですが、各製薬会社から様々な名称で販売されています。

これらに該当する薬があるのか、薬剤師や医師にご確認頂くことが必要です。

糖質制限のことを把握しないまま、医師がこれらの薬を処方してしまいますと、思わぬ低血糖を招いたり、逆に、あまり治療効果が得られなかったりします。

また、糖尿病合併症のひとつである糖尿病腎症の観点からも、担当医へのお声かけをお願いしたいと思います。糖尿病腎症の治療の最重要事項は、減塩です。

ついで、蛋白質制限があがりますが、後者についての効果は、確固たる結論を得ていない段階と思います。

糖質制限食では、相対的に塩分や蛋白質の量が増えることがあるため、糖尿病腎症の程度によっては、これを悪化させる場合がありうると考えます。

糖尿病腎症の程度や使用する食材およびメニューに気をつけながら、糖質制限を実施することが肝要です。

北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟先生のご発表によれば、同院の糖質制限食を導入しても問題ないと判定された糖尿病腎症のある患者さんで、少なくとも数年の観察期間中、腎機能は悪化しなかったということが報告されています。

最後に、お子さんやご高齢の方への糖質制限ですが、心理的な負担や胃もたれなどの不具合が無い限り、かえってのぞましい食事形態なのではないかと思います。

蛋白質や良質な脂質をたっぷり摂取できる糖質制限食では、筋肉の維持やホルモン作用の効果を期待できると考えられるからです。

とくに、主食などを半量にする「ゆるめの糖質制限」は、継続しやすいものと思います。

お子さんには、添加物の程度や、発癌性リスクの上昇が懸念されるという報告もある「四つ足動物の赤身肉・加工肉」の量に、留意されれば無難かなと考えております。

(川谷)ありがとうございます。やはり持病があるとなかなか難しくなるので、主治医ににきちんとアドバイスを求めることが必須ですね。

健康な内から食後の血糖値を管理することが一番大切なのかもしれません。 糖質制限をされている方で、LDLコレステロールにお悩みの方が多いのですが、LDLコレステロールに対する考え方はいかがでしょうか。

江部先生などは、中性脂肪が低く、HDLコレステロール値が高ければ、LDLコレステロールが高くても、小粒子のLDLや酸化したLDLは少ないと考えられ問題ないとおっしゃっていると思いますが。

LDLが高いと医師からコレステロールを下げる処方箋の話が出たりと不安になられる方が多いようでして、不安であれば、レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)の測定も有用であるように感じますがいかがでしょうか?

糖質制限でLDLコレステロールが上がる場合

(大城) 糖尿病・慢性腎不全・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症の患者さんでは、まだ、厳格にLDLコレステロール値を管理すべきと考えている立場です。これらの病気があると、虚血性心疾患を患いやすくなります。

また、「LDLの質と虚血性心疾患の関連」よりは、まだ、「LDLの量と虚血性心疾患の関連」をとりあげた報告の方が多いように思います。そのため、前述した病気の患者さんにおいては、LDLの量的な問題を無視できないでいる次第です。

一方、前述した持病がなければ、HDLコレステロールが40以上かつTG(中性脂肪)が150未満、つまり、LDLの質さえ良ければ、治療はしないことにしております。

RLP値を測定して頂くのは、虚血性心疾患のリスクの程度を把握するのに有用と思います。前述した病名がないと、保険上の問題で測定できない場合がありますので、担当医にご相談下さい。

ちなみに、HDLコレステロールなども、多いほど良かろうという印象を与えますが、100以上を示す患者さんの中で、逆に虚血性心疾患を発症しやすいパターンの場合があり、コレステロール値の解釈にはいつも本当に難儀します。

脂質異常症の治療基準と内容は、今後も変遷していくと思われます。取り残されないように留意します。

(川谷)なるほどです。参考になります。ここで大城さんの、普段の食事内容について教えてください。

(大城)毎食、糖質がだいたい40g程度におさまるようにしています。

私の場合には、この量を越えると、自然に前述した症状が出てきます。 自己血糖測定器で測ると、食後2時間で血糖値188mg/dl、食後4時間で血糖値36mg/dlなどと出て、やっぱり糖質を摂りすぎたということが確認できます。

このような経験を積むうちに、ほとんど糖質を摂り過ぎないで済むようになれました。 朝食は、お行儀悪いですが、諸々子らの出発準備をしながら、歩き回りながら食事を摂ることになってしまいます。

そのため、片手で食べられるものに限ります。 ミニトマト1~2個・チーズ3個・アーモンド20粒・前の晩の野菜おかず1品・無糖ヨーグルト1さじ・アサイーの粉・糖質制限食のパン(フスボンさん、あるいは自作のもの)1個です。

昼は、肉料理1品・野菜ときのこの料理1品・米飯もの2口ほどか糖質制限食のパン1個・ブラックコーヒー1杯です。 食後にクコの実20粒や、大好物の桃があれば1/8切れほど頂きます。
間食は、チーズ1個にブラックコーヒー1杯です。

夕食は、魚か大豆か豆腐料理1品・野菜ときのこの料理1品・糖質制限の菓子1個or普通のお菓子糖質10g分、ワイン1~2杯ほどです。 卵料理が1品入ることもあります。 夕食が早くて夜間に小腹が空くときには、チーズ1個を就寝2時間前までを目安に頂きます。

子供のメニューが私のものと違う点は、以下の通りです。

朝に果物を手のひら1/4枚分を追加、昼は幼稚園食、夕は主食を1/4~1/3人前を追加です。 子供の間食は、1回あたり、糖質10g程度になるように調整しています。 お菓子でしたら、箱の裏の成分表示を参考に、量を加減できます。 家人のメニューが私のものと違う点は、以下の通りです。 朝に果物を手のひら1/2枚分を追加、夕は納豆1パックを追加です。

(川谷)なるほどです。とっても参考になります。記事をご覧の皆さんも是非参考になさってください。 ちなみに外食時はどのようにされていますか?

(大城)外食時にも、今では、あまり糖質量を間違っていないと思います。

主食やお口直しは残すのは申し訳ない ので、注文をとって頂くタイミングで、「お腹に入らないので不要です」「1/4くらいに減らして下さい」などとお願いしています。

あるいは、お持ち帰りにしてもらい、小分けにして冷凍し、大人が数日かけて頂きます。 どうしても全部頂きたい主食やスイーツを供されたら、糖尿病治療薬のαーグルコシダーゼ阻害薬と同様な作用があると言われているお茶を飲み、頂いてしまいます。

私には、こういったお茶は効き目があるようですが、効果には個人差があると思われます。 各々、自己血糖測定器で、効果のほどをご確認頂く方が確かと思います。

また、一緒に会食する相手に、予め糖質制限中であることを伝えておくと、より会食を楽しめる場合もあるかと思います。 (川谷)なるほどです。

私は糖質制限キャラが定着しているので、回りから結構邪魔くさいと思われることもありますが(笑)、砂糖製品はなるべく摂らないようにして、外食では炭水化物はそこそこ摂ります。さすがに清涼飲料水は糖質制限をしてからは一切摂っていませんが。。

最近、オーソモレキュラーについてよく記事を見かけたり、自分でも勉強しているのですが、大城様もご興味ございますか?

糖質制限とオーソモレキュラー

(大城)オーソモレキュラーは、人としての生きる力を引き出す、とても魅力的な概念と思います。 診療していてなんですが、現在の医療は、どちらかというと、投薬・処置による「足し算・引き算」のような緊張感が表だっているように感じます。

対話こそあれど、短い診療時間が一般的でしょうし、患者側が生徒、医療者側が先生、といった構図すら浮かぶ場面もあります。

対して、オーソモレキュラーは、生きる元であり、日々の暮らしそのものである「食」に、両者が一緒になって眼差しを注ぐあり方であると思います。 また、「食」が入っていく消化器官 は、内臓でありながら、外からはいってくるものをまず受け止め、そして消化して排出する外界でもあります。

そこへ注目するオーソモレキュラーは、人体を内と外の両方から、何が善いのかをお手伝いできるイメージと思います。

自分や、自分が大事に想う人の体にとって、それはまるで、日々わたくしたちの心に寄り添い、全てを包み込む母親のようなあり方ではないでしょうか。 もちろん、この取り組みによって心理的な負担が生じる場合には、家族内で、あるいは患者と医療者との間で、本当にその人にとって「自然」となる落としどころをさぐる余地の十分あることも、その魅力と思います。

(川谷)私も、オーソモレキュラーは東洋医学的なアプローチで、病気の予防にはとってもいいなと思っています。

私は、生物学者の福岡伸一さんの動的平衡や部分と全体の話がとても好きなのですが、結果がすぐに求められ時間がかからないのが西洋医学で、結果はすぐに出ず場合によっては試行錯誤しながら時間をかけていく治療が東洋医学だと思います。

一度、病気になってしまうと、福岡さんの「部分と全体」の関係で表現されているように、機械論的にパーツの足し算引き算だけでは上手くいきにくいように感じます。

一旦、病気になると、定量的な数値や画像の診断結果など目に見える形で結果を患者さんは求めるでしょうし、どうしても原因と結果を一対一対応で結び付け、直ぐに結果が出るような治療が求められるのは致し方ないのかもしれません。

私も糖質制限にコミットしていますが、例えば自身がガンになった場合、高濃度ビタミンC・ケトン体治療を100パーセント選ぶかと言われたら、それはわかりません。初期のガンでしたら逆に切除を望むかもしれないですし、10年生存率などをみてトータルで判断します。

ですので、私自身は糖質制限を押し付けることはしません。 今は、健康な内から血液検査を定期的に行い、食事や漢方、サプリで自分の身体に合うものを探していくのが一番理にかなっているように思っています。

今後、糖質制限の良い点、注意しなければならない点について勉強を続けていきたいと思います。 今後もいろいろと医療現場の声を聞かせて頂ければ幸いです。本日は、ありがとうございました!

(大城)こちらこそありがとうございました!

≪大城陽代プロフィール≫
糖尿病代謝内科 日本糖尿病学会認定専門医・指導医

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  • 川谷 洋史

    1980年12月・大阪生まれ。 東京工業大学・工学部・建築学科卒。一級建築士。
    2012年ごろより糖質制限にハマり、低糖質で無添加、良質な脂質、人工甘味料を使用しないパンやスイーツがないことから、自作を始める。
    2014年9月にフスボンを立ち上げ現在に至る。
    趣味
    食べること、スポーツ観戦、サウナ、ゴルフ、ゲーム、登山、Youtube
    マイブーム
    糖質制限×サウナ×オーソモレキュラー
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