癌(がん)治療としての糖質制限・ケトン食についてトーク形式で考える。

癌(がん)治療としての糖質制限・ケトン食についてトーク形式で考える。

今回は、オーナーの川谷と代官山店長の高田で、癌(がん)治療としての糖質制限について対談形式で、整理してみたいと思います。

(高田)そもそもガンになるとはどういうことなのでしょうか。

(川谷)DNAは酸化にとても弱く、傷つきやすいといわれています。傷ついても修復されますが、断続的に傷つくと、修復が追いつかずDNAが変異してしまいます。それが、ガン細胞になるのではないかといわれています。

(高田)では、DNAが傷つく原因は、何でしょうか。

(川谷)活性酸素によるDNAへの攻撃が主因であると考えられています。

(高田)活性酸素は、どのような際に生じるのでしょうか?

(川谷)一口に活性酸素といっても、数種類あります。 まとめて、活性酸素種(ROS)とも呼ばれています。 ミトコンドリア内でATPを生み出す際、酸素が電子を受け取り活性酸素が生じます。

①酸素(O2)+電子(e-)
→スーパーオキシド(•O2-)

②スーパーオキシド+電子
→過酸化水素(H2O2)

③過酸化水素+電子
→ヒドキシラジカル(•OH)

その他
◯酸素に紫外線→一重項酸素
(体内の色素が増感剤の役目をして生じる)
◯次亜塩素酸HOCl

•はフリーラジカルを示す。

(高田)どのROSも有害なのでしょうか?

(川谷)どれも有害ですが、①と③がフリーラジカルを持ち、特に有害です。そこで、大事なのが、抗酸化酵素です。

①の段階で、活性酸素を食い止めることがまず重要で、スーパーオキシド・ディスムターゼ(SOD)といわれる酵素がミトコンドリアの内外に存在しており、スーパーオキシドを過酸化水素に変化させます。

②の過酸化水素を無害化する酵素として、
カタラーゼ、ペルオキシオンダーゼ、グルタナチオンが存在します。

③のヒドロキシルラジカルを無害化出来る酵素は、残念ながら存在しないので、過酸化水素の段階で無害化することがとても大事になってきます。

通常の活動でも、全ての活性酸素は無害化できず、1%から3%の活性酸素は活性酸素として残ると言われています。

(高田)なるほど。抗酸化酵素がとても重要なのですね。 抗酸化酵素の働きを強めるには何か方法はあるのでしょうか??

(川谷)適度な運動をすると抗酸化酵素が活性化するといわれています。 有酸素運動と筋トレを両立するのがよいみたいです。活性酸素が適度にでると生じる現象で、ホルメシス効果といわれています。

(高田)活性酸素にも功罪があるのですね。 ガン治療に少しづつ話を戻したいのですが、糖質制限絡みのガン治療とはどのような理屈なのですか?

(川谷)もう少し前提知識がいるので、そこから説明させて下さい。
まずは、エネルギー生成として2つの回路があることから復習しましょう。

まずは、酸素を必要としない、解糖系(嫌気的)回路
ブドウ糖を分解して2つのATPを生み出します。
結果としてピルビン酸ができ、酸素がないと乳酸ができます。これは、疲労やコリの原因となります。 ミトコンドリア断面 もう1つは、酸素をつかって、ピルビン酸や脂肪を分解し、ミトコンドリアを経由してエネルギーを生み出す、クエン酸回路(好気的)です。

ブドウ糖→ピルビン酸→アセチルCoA。
あるいは、脂肪→脂肪酸あるいはケトン体→アセチルCoAと分解され、どちらも最終的にはアセチルCoAが使用されます。

前者は1つのブドウ糖から2個のATPを生み出し、
後者は1つのブドウ糖から36個のATPを生み出します。
エネルギー生成に18倍もの違いがあります。

前者は簡単にエネルギーを生み出せるメリットがあり、後者は、酸素やミネラルなど沢山の条件が必要となりますが、大きなエネルギーを生み出せます。

余談ですが、死後に体が硬直するのは、死ぬと酸素の供給が止まり、クエン酸回路は止まります。 それでも、酸素を必要としない解糖系の回路だけは、回り続けるので、その際に生じる乳酸が体に溜まり、全身が筋肉痛のような状態になるからだそうです。

(高田)ガンの検査方法であるPET検査もこの原理を利用しているのですね?

(川谷)そうです。ほぼ解糖系のみでATPを生み出すガン細胞は、通常細胞の3から8倍のエネルギーを吸収するといわれています。
FDGと呼ばれる、ブドウ糖のヒドロキシ基を1つ取り、ポジトロン核種をくっつけた薬を身体にいれます。
ポジトロン核種は周囲の電子と反応し放射線(ガンマ線)に変わる特徴があり、このガンマ線がのちのち目印となります。

(高田)他にも、ミトコンドリアが存在しない細胞も存在しますよね。赤血球、副腎髄質、網膜などをよく聞きます。

(川谷)そういった細胞は、解糖系のみで動きます。 がん細胞は、正確にいうとミトコンドリアが正常に働いていない細胞といえます。

ガン細胞が解糖系をメインで動いていることは、 ノーベル賞受賞者のワールブルクが発見したことから、ワールブルク効果と呼ばれています。 ミトコンドリアが正常に働いていない点がポイントで、ミトコンドリアが機能していないことで、ガン細胞内では活性酸素が発生しないので、ガン細胞は傷つくことがないのです。

(高田)なるほど。ガン細胞内で活性酸素を発生させればいいのですね?

(川谷)そうです。ポイントはもう1つあって、ガン細胞内では、抗酸化酵素の活性が弱いことが知られています。そこを利用して、ガン細胞内で活性酸素を発生させ、ガン細胞を壊してしまおうというわけです。

(高田)具体的には、どうするのでしょう?

(川谷)以前からあるのは、放射線治療ですね。 放射線をガンに照射して、活性酸素を出させて、ガン細胞を死滅させます。もちろん、正常細胞にも紫外線が当たるので、抗酸化酵素や抗酸化物質で対応できない場合、正常細胞も傷つく可能性があります。

(高田)最近、話題の高濃度ビタミン・ケトン治療の仕組みはどうなのでしょうか?

(川谷)ビタミンCは抗酸化物質として有名ですが、高濃度になると、逆に強い酸化作用をもつヒドロキシラジカルを生み出します。 ビタミンCとブドウ糖は非常に形状が似ているため、がん細胞はビタミンCを誤って取り込んでしまい、ヒドロキシラジカルによってがん細胞は傷つきます。

これは私見ですが、先ほどの、PET検査の話で、ガン細胞は、通常細胞に比較し、3から8倍ブドウ糖を吸収するといいましたが、ビタミンCも正常細胞より3から8倍取り込んでしまうのではないでしょうか。

ちなみに、高濃度のビタミンCというのは、定量的にいうと、400mg/dl程度以上です。 その程度になると、強い酸化力をしめすとされており、点滴で血管に直接取り込みます。

普段、私たちが食品やサプリの口からの摂取では、そこまでの高濃度にはなりえません。

この理屈は、ノーベル化学賞を受賞した、ライナス・カール・ポーリングが高濃度ビタミンCでガン細胞が死滅することを示したことから始まったとされています。

(高田)後ろにくっついているケトン治療というのは?

(川谷)ここが糖質制限と絡みます。 解糖系回路の原料となる、ブドウ糖の摂取をやめ、糖新生が起きても糖がなるべく吸収されないように、メトホルミンやSGLT2阻害薬を使用し、解糖系によるガン細胞へのATPの供給を止めます。 同時に、脂肪をエネルギーとできるミトコンドリアの働きを、マグネシウムや鉄などのミネラルの摂取などにより活性化させ、活性酸素を発生させ、その活性酸素でガン細胞は、死滅する。 そういう仕組みです。

(高田)なるほど。やはり、通常細胞でも活性酸素が沢山発生するでしょうから、抗酸化物質や抗酸化酵素の働きが大変重要になってきますね。

(川谷)そうですね。適度な運動により、抗酸化酵素の働きを強め、ビタミンEやフィトケミカル、ポリフェノール、アスタキサンチンなど抗酸化物質をきちんととることが大事ですね。

(高田)活性酸素は、マイナスのイメージしかなかったですが、運動によって抗酸化酵素の働きを強めたり、ガン細胞を死滅させたりと活躍しているのですね。

(川谷)そうですね。どんなことでも二面性があるんですよね。先ほどのビタミンCもそうです。本来は抗酸化物質として知られていますからね。 活性酸素は、その強い酸化力から細菌などの感染症からも身体を守ってくれています。

活性酸素は、ミトコンドリアがATPを作り出す場面だけでなく、酵素からも発生します。 白血球の一種である好中球は、Nox2といわれる酵素から活性酸素を生み出し、内部に細菌を包み込み、強い活性酸素で、細菌を殺してくれています。

また、ホルモンを出したり、酵素を出す際の、シグナル伝達の際にも、多くの物質が持っているNADPHオキシターゼといわれる酵素から活性酸素を作り出し、活性酸素が仲介役として機能しています。

(高田)インスリンを出す際に、活性酸素が発生するのは、シグナル伝達を円滑にするための活性酸素だったのですね。勉強になります。

最近、小林麻央さんが乳がんをきっかけにお亡くなりになりましたが、年齢も近いこともありとても心を痛めています。 同時に、私自身さらに食事や運動、ストレスとガンについて考えることも多くなりました。

(川谷)小林麻央さんのことはとても残念です。日本国民全体が悲しみ、自分自身の生活習慣について考えているのではないでしょうか。
がんは5年生存を調べないといけないので、そういった意味で、高濃度ビタミン・ケトン体治療の臨床データはありませんし、僕自身や身内がガンになった際に、外科的な手術をするかどうかの判断はその時のステージや転移の具合にもよりますよね。

あれだけの取り巻きがいらしたので、治療には最善を尽くされたのだと思います。あらためて小林麻央さんのご冥福をお祈りいたします。

(高田)あらためて何に気をつけて生活していけばいいですか?

(川谷)ある意味で、ありきたりな答えになってしまいますが、以下の4点を挙げさせて頂きます。

糖質を控えて、インスリンの働きを緩やかにし、シグナル伝達に関わる活性酸素を少なくすること。
②精神的なストレス、物理的なストレス(紫外線・放射線・排気ガスなど)を浴びると、体がそれに対抗するために副腎皮質ホルモンを出す。

その際のシグナル伝達にも活性酸素が生じるので、規則正しい生活をし、ストレスレスな生活を心がける

③活性酸素を無害化する抗酸化酵素の働きを良くするために適度な運動をすること。
抗酸化物質(ビタミンE、ポリフェノール、フィトケミカルなど)を定期的に摂る

以上のことが、ガン予防には重要ではないでしょうか。 いかがでしたでしょうか? 今月からとても暑くなります。汗でミネラルが出て行きがちですので、硬水やにがりで水分補給を必ずお願い致します。

ご希望のコンテンツや対談をしてみたいという方がいらっしゃいましたら随時募集しておりますのでご連絡ください! では、またお会いしましょう(*´∇`)ノ

※この記事の参考文献 ○マガジンハウス Tarzan 2017年 7月13日号 No.721 [酸化・糖化・炎症 やさしく学ぶ、カラダに怖い3つの話。] ○株式会社 幻冬舎 糖尿病に勝ちたければ、インスリンに頼るのをやめなさい! 著者:新井 圭輔 書籍番号:978-4344993228 ○光文社新書 ケトン食ががんを消す 著者:古川 健司 書籍番号:978-4334039509 ○がん細胞におけるエネルギー産生の特徴を利用したがん治療 銀座東京クリニックHP
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  • 川谷 洋史

    1980年12月・大阪生まれ。 東京工業大学・工学部・建築学科卒。一級建築士。
    2012年ごろより糖質制限にハマり、低糖質で無添加、良質な脂質、人工甘味料を使用しないパンやスイーツがないことから、自作を始める。
    2014年9月にフスボンを立ち上げ現在に至る。
    趣味
    食べること、スポーツ観戦、サウナ、ゴルフ、ゲーム、登山、Youtube
    マイブーム
    糖質制限×サウナ×オーソモレキュラー
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